スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Oh, Rock My Soul!--桃井第三小学校講演会2日目--

彼らは底冷えのする廊下に待機し、子供たちの甘い匂いと熱気の充満した教室を前に、入場の合図を待っていた。

子どもたちの甲高い声色と拍手が奏でるBGMのなか、入場を促すため、先生がこちらを見やった。

「天畠大輔さん、よろしくお願いいたします。」

そう、これはプロレスラーの入場にも似た感覚。期待と好奇心を携えたまなざしが、一身に注がれるための恐怖心と、それを打ち消そうと幾重にもつぎはぎした虚栄心。彼らは最高のパフォーマンスを見せなければならない。そのために、今日もこの会場に乗り込んだのだから。

ゆっくりと深呼吸し、歩を進める3人は駆け出しの新人レスラー。2014年1月30日、桃井第三小学校、2日目のリングに立った。

天畠と進行役そして通訳者は、一心同体にならねば、観客を沸かせるほどのパフォーマンスは期待できない。彼らは強固なタッグを組んで、このリングで羽ばたかなければならない。

3人の紹介が終わり、リングに上がった彼らの高揚感は最高潮を迎えた。しかし彼らの武者震いは、余裕のなさからでる緊張感そのものであった。リズムを掴むためのつかみの挨拶を飛ばしてしまい、事前に考えていた流れがわずかに淀みはじめる。
しかし、たいしたことではない。また、挽回のチャンスは訪れる。ミッキー・ロークの演じた古老のレスラー(1)は1回の失敗で諦めはしなかった。流れをつかめ。まだ心が折れるには早すぎる。

まずは、フットワークを確認し、子どもたちが出してくれた天畠への質問に答えていく。通訳者の説明に多少時間はかかったものの、なんとか切り抜ける。子どもたちの顔付きも、真剣だ。

桃井1.jpg



開始から20分経ち、会場の熱狂も、いささか落ち着きを取り戻しはじめた。子どもたちの視線はこちらの一挙手一投足に向けられる。

ここで、天畠の繰り出した大技、「オッケー」(2)も炸裂し、会場は一気に湧き上がる。


桃井2



ここから、大円団へ向かいラストスパート。「伝えることを、あきらめない」精神を、子どもたちへ伝えなければ。コミュニケーションを断念することは、天畠大輔のレゾンデートル(raison d'etre)(3)を否定することにつながる。

しかし、ここでまたしても流れが変わる。スライドの切り替えに支障が出る。予定していた段取りが、出てこない。しばらく流れる沈黙。それに伴う不安と動揺。

リング上の3人の身体は固まり、視線が宙を泳ぐ。時間は迫ってきている、もう「ローラ」を出す余裕もない…。

切り替えよう。通訳者は、終盤に向けて流れを引き戻しにかかった。力技もやむを得ない。レスラーにしては華奢な腰が悲鳴を上げる。

引き戻した流れに、クライマックスを接合する。しかし、用意されたスライドに気が引かれ、注意散漫になる子どもたち。「だまし絵」に一杯喰わされしまったのは、彼らの方なのか!

ざわつく会場に、通訳者の「あ、か、さ、た、な」が彷徨う。もはや立っていることもままならない状態で繰り出した、「伝えることを、あきらめないで」という言霊。


桃井3



最後の言葉は、子どもたちにどれほど響いただろうか…。

満身創痍の新人レスラーたちは、おもいおもいの表情を浮かべ、煮え切らない様子でたたずむ。

しかし、そんな傷ついた3人に送られた、子供たちからの声援とパフォーマンス。自分たちを鼓舞するんだという力強いメッセージ。「Oh, Rock My Soul!」(4)小さい身体を駆使して、内に秘めたエネルギーを分け与えるかのように、彼らを讃えてくれた。


桃井4



リング会場を後にし、控え室に帰った天畠。憔悴しきった彼のもとに訪れた小さなファン。そして、彼女から手渡された一通の手紙。それは天畠とその子だけの宝物。天畠を支えた2人も、そのプレゼントに、救われた思いがした。

彼らは決意した。最高のパフォーマンスを見せるために、これからも努力しよう。一人でも多くのファンを獲得して、話を聞いてもらおう。そして今度は、君たちが与えてくれた「心を鼓舞する」ような、そんな出会いを与えてあげようと。

「Rock your Soul!」
またどこかで、互いの魂をふるわせるセッションを。

介助者 M・K



【註】
(1)『レスラー』(原題: The Wrestler)は、2008年公開のアメリカ映画。かつてスターだった中年のプロレスラー(ミッキー・ローク)が、試合後に心臓発作で倒れ、医師から引退を宣告され、自身の人生を見つめ直す物語。

(2)四肢マヒのある身体を駆使して繰り出した大技。ローラの「オッケー」に着想を得ている。

(3)フランス語で、あるものが存在することの理由。存在価値。実存哲学において、存在を問う際に使われる用語。

(4)黒人霊歌の一つ。歌詞に登場する「高くて登れない」「低くてくぐれない」「広くてまわれない」という歌詞には人間が達成すること(平和、平等、博愛など)の困難さを表現している。しかし、私たちは掲げた理想を達成するために自分たちの魂を打ち震わさねばならない。
スポンサーサイト

Pagination

Trackback

Trackback URL

http://daijob220.blog106.fc2.com/tb.php/175-c1bb0ed4

Comment

Post Your Comment

コメント登録フォーム
公開設定

Utility

プロフィール

天畠大輔

Author:天畠大輔
    

14歳のとき医療ミスにより四肢マヒ・言語障害・視覚障害を負う。
以降、1日のほとんどを車いすで生活している。
2010年4月立命館大学院博士前期課程に進学。
今のわしの夢は、
・大学院にて、「聴覚走査法(Auditory Scanning)を中心とした拡大代替コミュニケーション(AAC)を用いた際に生じるタイムラグ」を専門に研究し、障がい者がよりよい生活を送れるようにすること、
・フランスのALISのようなロックトインシンドローム(全身麻痺だが意識や知能は全く元のまま)の支援者の財団を立ち上げること、
この2つです。
夢に向かって今日も素敵な仲間たちと勉強に励んでいます!

Twitter

天畠大輔 < > Reload

FC2カウンター

FC2カウンター

現在の閲覧者数:
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。